スペクトラムに量子的

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臨床心理学について書くブログ

「甘えの構造」を読む(1)

こんにちは。

今回は、臨床心理界隈では高名な「甘えの構造」(土居 健郎著)について書きます。

臨床心理士を目指して勉強中の身でありながら、この名著を未読という不勉強さを恥じつつ、ようやく読む機会を得ました。もっとも、読んでないと恥ずかしいので、という後ろ向きな理由からですが。ともあれ、代表的な日本人論として抜群の面白さなので、未読の方にはおススメです。

さて、土居 健郎先生は東大医学部を卒業後、陸軍軍医を経て精神科医として活躍され、アメリカでも精神医学や精神分析を学ばれた方です。アメリカ留学中に、日本人とアメリカ人との精神構造の違いを感じ取り、日本人に特有な「甘え」というキーワードに着目して思索・研究を続けてこられたようです。

「甘え」の語彙

まず土井先生は、日本には「甘え」の語彙が多いことを指摘します。例を挙げれば、「すねる」「たのむ」「とりいる」「すまない」などの言葉がこれにあたります。これらを使用する状況や行動の理由などを考えてみると、おどろくほど「甘え」というキーワードによって貫かれていることがわかってきます。

  • 「すねる」:甘えられないから、すねながら甘えている
  • 「たのむ」:甘えさせてほしいという前提でお願いする
  • 「とりいる」:相手を甘えさせるとみて、実は自分を甘えさせる
  • 「すまない」:相手が迷惑すると好意を失ってしまい、結果的に甘えられなくなるので、謝罪(感謝も含む)する

どうやら、西洋(キリスト教圏)においては、「甘え」を意味する表現がないらしく、子供が親に甘えたり、夫が妻に甘えたりするシーンを見ても彼らは、それを愛の表現であると解釈するらしいのです。一方、日本ではそうしたシーンを「甘え」という言葉で認識する。土井先生はそこに人間関係のベースの違いを見たようです。

 

まだいろいろと頭が整理されていないので、まずは覚え書きを何度かに分けて書いていこうと思います。

「甘えの構造」を読む(2)へ続く