その2:人間が問題なのではない、問題が問題なのだ「ナラティブ・アプローチの理論から実践まで」を読む
こんにちは。今回は前回に引き続き「ナラティブ・アプローチの理論から実践まで」の読書メモです。
前回はナラティブ・アプローチの理論について、自分なりに理解したことを簡単にメモしてみました。キーワードとしては、「脱構築」「ディスコース」「オルタナティブスストーリー」「社会構築主義」「エイジェンシー」などが挙げられるでしょう。詳細は前エントリーをご一読ください。
外在化する会話法
ナラティブ・アプローチの要諦はまず、問題を外在化することにあり、そのためには外在化する会話法が必要になります。以下に本書から会話例を引用しますが、翻訳書ということもあり、書き言葉感が否めないという感はあります。たとえば以下のような一文。
私たちの会話のなかで、あなたの問題が私たちの一緒の時間を完全に支配していなかったような時がありました?
なかなか普段われわれが行う会話にそのまま導入するのは難しそうです。そこで、もう少し砕けたアレンジを考えてみたいと思います。ポイントは「(クライエントの)問題が全てを支配しているわけではない、という可能性について検討できる視座」の存在を示唆できるかにあるでしょう。
こうした視座を獲得し言語化することで、クライエントは問題を外在化することができるようになり、同時にディスコースを検証することが可能になります。さらにそうしたプロセスを通して、より好ましいオルタナティブ・ストーリーを発見する可能性が生まれてきます。
さて、話を戻しましょう。砕けたアレンジとして以下のような表現を考えてみました。
「今喋っていて、あなたの問題は全部のやり取りに影響していましたか?」
このアレンジであれば「今の会話が全て問題によって支配されているか?それとも全てを支配されているわけではないかな?」というような問いが内包されており、「問題に支配されてはいない可能性について検討できる視座」も示唆されているのではないでしょうか。
こうした問題を外在化させるような問いかけの例が他にも、本書にはいくつか掲載されていますが、これらについても、活用するにはこなれた日本語会話にアレンジする必要がありそうです。
問題が占領していないような小さな領域が、まだあなたの生活のなかにありますか?
問題にまだ色づけされていない夢を最近になってみましたか?
まとめ
今回のエントリーは問題を外在化させる具体的な会話法について、自分なりに本書から学んだことをメモしてきました。簡潔なまとめは以下のようになるかと。
問題を内在化させる表現
私は「○○(問題・欠点)」な人なんです。
問題を外在化させる問いかけ
「○○(問題・欠点)」はあなたに何をさせるのですか?
クライエントは自らの問題を言語化する場合に内在化させて語ることがほとんどですから、セラピストは問題を外在化させるような問いかけをすべきというのがポイントです。
最後に本書からの一節で締めたいと思います。
外在化する言葉遣いをすることのほうが外在化される問題を突き止めることよりも重要である。
今回はここまでに。
「ナラティブ・アプローチの理論から実践までを読む」はこれにて終了。